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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)580号 判決

主文

原判決を破毀する。

理由

各被告人の弁護人丸山勇之助の上告趣意は末尾添付の別紙記載のとおりであり、これに対する当裁判所の判断は次の如くである。

本件の控訴が原審東京高等裁判所に繋属するに至ったのは、第一審裁判所が各被告人無罪の判決を言渡したのに対して、檢察官が控訴の申立をした際、控訴申立書の宛名を東京高等裁判所としたため、所定の順序により記録が原審に送付受理されたことによるものと認められるが、裁判所法施行前の昭和二二年四月四日前橋区裁判所檢事局檢事より同区裁判所に起訴せられた暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項違反事件で、同裁判所に繋属中裁判所法が施行せられたため、裁判所法施行法第二条第一項及び裁判所法施行令第三条第一項乃至第三項により前橋地方裁判所の一人の裁判官によって審判(昭和二四年四月二二日判決言渡)せられた本件の控訴が同地方裁判所の裁判権に属しその合議体において審判すべきものであることは前記施行令第三条第四項及び第五項の特別に規定するところであって、旧刑訴第三五六条はその性質上控訴裁判所の職務の管轄については適用がないものと解するのが相当である。されば、原審がこれと異なる見解に立って本件について審判したのは、不法に管轄を認めた違法があることに帰し、論旨は理由あり、原判決は破毀を免がれない。(昭和二五年(れ)第一〇六号、同年五月三〇日第三小法廷判決参照)

よって、旧刑訴第四五〇条に従い、原判決を破毀して本件を前橋地方裁判所に移送すべきものとし、主文のとおり判決する。

右は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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